Pick Up

タグ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

フロム・ヘル 下

再度フロム・ヘル読み直しました!
二回目でやっとレビュー書ける状態になった…
これは一生心に残り続ける作品だと思う。最初に読んだ時とはまったく印象が逆になってしまった(T_T)感動…

フロム・ヘルの前のレビュー

以下、再度レビュー。


フロム・ヘル 下フロム・ヘル 下
(2009/10/10)
アラン・ムーア

商品詳細を見る


ガル博士が幻視でみたのはヤー・ブル・オン、黒い山羊。その右にはエジプト風の神、左にはフリーメーソンを神格化した姿。


三位一体の幻視

ユングの『現在と未来』を思い出した。
ナチスが猛威をふるった時代に書かれた警告の書。

現在と未来―ユングの文明論 (平凡社ライブラリー)現在と未来―ユングの文明論 (平凡社ライブラリー)
(1996/11)
カール・グスタフ ユング

商品詳細を見る


火の神、激しく燃え盛り、切り裂きなぎ倒す野生的な力…それはヤー・ブル・オン、かつてはバールと呼ばれ、キリスト教によって異教の神として悪魔と並び称されるようになった神の力。あるいは、デュオニュソス、ヴォータン、セト、荒ぶる残虐な男性的な力。

その辺については、こちらのページに詳しいです↓
http://www.mkmogura.com/blog/tag/オシリス

ガル博士は黒魔術の儀式として娼婦たちを殺したけれど、それはあくまでも表面上のことであって、真の目的は『錬金術で言う所の神聖な結婚の儀式』だったらしい。その儀式は、神から与えられた何よりも困難な使命であり、ガル博士はストイックにその使命を遂行することに一生を捧げる。

ガル博士が死の間際に観るメアリ・アンと子供たちの姿。メアリに悪魔と罵られるガル博士。ここで、殺されるべきだったメアリ・アンの殺害が失敗したことが判明する。

黒魔術の儀式は成功した。でも、それはガル博士の考えていたようなものではなかった。ガル博士が望んでいた錬金術『男性原理の力によって女性原理を拘束しコントロール』する目的は果たされなかった。でも、『男性原理の火の力で、女性原理の水の力を気化させ、融合ののち昇華させる』目的は成就したのかも…?儀式の最後に、心臓を入れたやかんから発した閃光…何かの得体のしれない強烈なエネルギーで、やかんは溶けてしまっていた…。

そしてガル博士は21世紀のヴィジョンを見る。そこには現代人の生気のない目、高度な科学で作られた機械の数々…ガル博士は叫ぶ!
『わしを見よ!目を覚ましてわしを見るのだ!わしはそなたらの中にいる。いつもそなたらの中にいる!』
この言葉の力(´Д` *)!!ここに、この作品のすべてが集約されてる気がする!

この【わし】というのは…ガル博士であり、ヤー・ブル・オンであり…神なのだ!ツァラトゥストラかく語りき、輝きに満ちた我々の神性。閉じ込められた原始感覚、コントロールされなければ危険な本能の力。

ガル博士の苦しみ、献身…自分の努力がこんな形にしかならなかったのか…という嘆き。融合するどころか、分裂したまま、未来の人類の精神は鋭敏さを失い幻のカオスの中で朦朧としたまま耽溺していく。…その後彼は急激に生気を失っていく。

ガル博士の儀式は失敗したのか?花嫁は取り違えられた。完全に大地母神が虐げられ、男根のようにそそり立つオベリスクの呪縛に戒められる事態にはならなかったのだ。

でも、最終的な答えは、今から私たちが目撃する未来として立ち現れてくるんだろうけれど…生命力の迸りが新たに復活を遂げる時代を迎えて。




何よりも、このガル博士が自ら切り刻んだ娼婦の亡骸を抱きしめるシーンに感動してしまった(T_T)

ガル博士はガル博士なりに『愛』していたんだ!でも、それは常人には理解し難い愛し方だった。それだからこそ何よりも困難な仕事であったし、それだけ重要な使命だった。誰よりも彼は儀式の重要性を信じていたからこそ、儀式は忍耐強く成し遂げられたんだと。ガル博士の壮大な実験…。

ルシファーの生い立ちで、よく天界から落とされるまでは誰よりも頭が良く思いやりに溢れた天使だったと言われるけども…ルシファーは頭がすごく良かったから、神様にも思いつかない新しいアイデアを思い付いてしまって地上に落ちてきた…って説。
なんだか、その片鱗をガル博士に見た気がした(>_<*)


アラン・ムーアって著作活動以外に本当に魔術師として活動してる人なのだけど…この人、本当に魔術師なんだなぁ(T_T*)

権力によって駒としてコントロールされる人々。陰謀、罠、巧妙な計画…。善悪は人間の作り出した幻影…幻影は得てして相対的なもの。あらゆるものが対立しているように見える世界を越えて、ガル博士は真実の永遠の世界へと入っていく。そして、時間は直線的ではなく螺旋状に上昇、展開していく。すべてがひとつ、あらゆる所ですべてが同時に存在する。

・歴史には建築構造がある…?
・ハワード・ヒントンの時間と4次元についての話…http://j.mp/UImAuE
この辺はまだまだ掘り下げられそうで楽しみです(*^^*)♪

ガル博士の苦悩と真摯さを思うと…どうにも言い表し難い愛おしさというか、過酷すぎる現実を見せ付けられた後のカタルシス&恍惚感を感じる…

ガル博士の神、男性原理であるデュオニュソス的な力と、ガル博士が女たちに見た女性原理であるカーリー(インド神話の恐ろしい女神)的な力…その両方ともが、荒ぶる危険な本能のエネルギーであることに変わりはないのだけどなぁ。

それらの野生の危険なエネルギーを扱うのが魔術師、シャーマンであり、ガル博士はまさに黒魔術師としてエネルギーを調合し、炎によって昇華させた…

魔術師の入り込む現実の別の領域、迸る荒々しい動物的エネルギーの世界で、一歩間違えばそれは暴力的で破壊的な結末へと繋がる。

まるで幼い子供がプルトニウム爆弾で遊ぶように。人類が原子力を弄ぶように。強大すぎる力は、それ相応の知性と、なによりも正しい心を必要とする。

ガル博士には欠けていた、その心こそが、何よりも大切なんだ、と。


なんだか一回目に読んだ時は、あまりの情報量と衝撃にフリーズ状態に陥ってしまったけれど、改めて読み直すとまったく違う感動が押し寄せてくる( ; ; )

ものすごく思考力と知識(秘密結社や錬金術や神話について)を要求されるけど、『現象学』とか『認識』についてとか『精神世界』『二元論と一元論』あたり考えたことある人には是非読んで欲しい怪作!!

これは読むたびに新たな発見がありそうだなぁ★これからもたまに読み返したいかも(^-^)

追記:妖精さんに教えてもらった『ヒトラーの予言』と題されたこちらのページを読んでいて↓
http://inri.client.jp/hexagon/floorB1F_hss/b1fha400.html
なんだかヒトラーとガル博士がダブって見えてきてしまった

世界を変えるため、黒魔術の秘儀を執り行うふたり。

どちらもフィクションかもしれない。でも、ふたりはよく似ているように思えて仕方ない(>_<)!アラン・ムーアはヒトラー伝説について知っているのかなぁ?どうもそんな気がしてならない…



追記:聖娼―永遠なる女性の姿

この本を読んで気づいたのだけど、ガル博士は完全にやり方を間違えていたんじゃないかと思う。

否定的な男性性である「暴力的な側面」を顕著にした儀式によって、娼婦として象徴的に表される否定的な女性性である「淫乱な側面」を征服することでは、神聖なる結婚は成就しない。

それはただ単に、男性性が女性性を蹂躙していく、今までの女性迫害の歴史と同じであって、無闇で不毛な禁欲主義が長々と続き、人々を不幸に陥れる結果に終わった。

ガル博士の儀式は、そもそもの信念にこういったキリスト教的な「性欲は悪」とする歪んだ思想があるので、結果的に世界に不幸を招くのではないだろうか?

博士が「愛した」と思い込んだ行為の数々は、「魔女狩り」と同じものだ。
彼らの「神の教え」によって、女性を拷問し、切り裂き、レイプし、その野蛮で恐るべき行為を「神の愛」だと言い張る。
本当の愛とは、そんなものではない。

性欲=生命力であり、その生命力は女性性と密接に結びついている。
女性性を貶めることで、生命は枯れ果て、力を失い、衰退して行く。
生命力を得ようと、その源を征服することで、結果的には源である生命の泉を破壊し、自ら墓穴を掘る結果となっている。

後に残るのは荒れ果てた大地と、飢えて凶暴な獣と化した否定的な男性性だった何かの成れの果てだという気がする。

(2013.10.25)
スポンサーサイト

COMMENT

EDIT COMMENT

非公開コメント

ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。